留学生体験記

 留学は他国の言語や文化を学ぶことができるだけではなく、自分や自国の文化としっかり向き合える貴重な機会を提供してくれます。そこで、留学について少しでも具体的なイメージをもってもらえるように、先輩からの留学体験談を集めてみました。
 あわせて留学中の様子をレポートした「留学生日記」も掲載していますので、ぜひご覧下さい。

先輩の留学体験談はこちら

○ デトロイトで新しい自分発見/齊藤有生さん ○ ミシガン工科大学での思い出/杉山優太さん ○ 広い世界に飛び出そう/槙山恵子さん ○ 欧州の魅力を感じながら/山元周吾さん ○ 二つ目があるから立体的に見える/大石大介さん ○ タフになる、中国留学/小林未緒さん ○ 心に小さな冒険を/深江宏美さん ○ 韓国で勝ち取ったもの/組田裕子さん ○ モンゴルで女優体験!?/堀田真由さん

デトロイトで新しい自分発見

齊藤 有生 さん

 私は大学院生のときにアメリカ、ミシガン州デトロイト市に留学をしましたが、同じ研究分野のことを学ぶにしても、日本で学ぶのと留学先で学ぶのとでは、全く違った観点でアプローチできることがわかり専門分野への理解がさらに深まりました。様々な文化や言語を背景にもつ人たちと触れ合う機会に恵まれて、互いの文化を尊重し、許容する能力が自然と身に付きました。またそれに伴って自分のアイデンティティについて初めて意識するようになり、国籍や宗教などに囚われずに、誰とでも一個人として対等に話ができるようになりました。就職して社会に出ると、相性の良い人、あまり良くない人とでも仕事の上で付き合わなければならない場面が多々ありますが、留学を経験したことによって外国の人に対してだけではなく日本人に対しても相手のことを尊重しながら付き合えるようになりますので、業務をスムーズに進めることができています。また、海外に事業展開をしている企業で働くことになれば、外国で生活した経験や言語の運用能力を評価してもらえますので、外国で仕事をするチャンスを得ることもできます。実際のところ、私の場合も来年度に海外に赴任することが内定しています。留学によって直接得られる経験は確かに魅力的ですが、それ以上に目に見えないところで自分自身が成長し、世の中に対して幅広いビジョンを持てるところが留学の魅力だと思います。

齊藤 有生 さん
・環境科学部環境建築デザイン学科卒 ・ミシガン州立大学連合協定校 ウェイン州立大学留学 ・清水建設株式会社勤務

ミシガン工科大学での思い出

杉山 優太 さん

 私は大学3年生の時(2006年)、本学の交換留学プログラムに参加し、ミシガン工科大学で素晴らしい体験をしました。アメリカの中でも優秀なITエンジニアを輩出することで定評があり、キャンパスはスペリオル湖を目前にした広大な自然が広がる美しい所にあります。その地で私は授業の予習、復習、課題をこなし、休日はスノーボードやスケートを思いっきり楽しむ生活を送っていました。大学がスキー場も所有していることもありスノーボードを気軽に思う存分楽しめました。長期の休みには友達の家族にお世話になりミシガン州だけではなくシカゴやラスベガスなどの大都市も観光し、様々な異文化が交じり合ったアメリカを見てきました。地域によってまったく違う風景をもっているアメリカは本当に興味深く、壮大でした。
 留学の素晴らしい点に様々な人と出会えるということがあると思います。イスラム教やヒンドゥー教の文化。カザフスタン、ケニア、スペイン、イタリア、フランス、中国、インド、フィンランドに韓国などの国。皆それぞれの人生背景を持ちそれぞれの目標をもって自国を飛び出し、アメリカに勉強に来ていますが、彼らの行動や発言は力強く説得力があるものでした。英語は今や世界各国の人達とのコミュニケーションのツール。色んな国の人達と共通の言語で意思疎通ができた時には、英語を勉強しておいて本当に良かったと思いました。このような留学経験もあり、現在、私は海外との取引が盛んな商社で働いています。今年からインドに駐在し、より刺激的なビジネスライフを送っていく予定です。
 滋賀県立大学の交換留学プログラムの制度を大いに活用して自己啓発の手段とされてはいかがでしょうか。きっと充実した毎日が送れることと思います。

杉山 優太 さん
・環境科学部社会計画学科卒 ・ミシガン州立大学連合協定校 ミシガン工科大学留学 ・日立ハイテクノロジー勤務

広い世界に飛び出そう

槙山 恵子 さん

 私は、大学在学中に海外での語学研修に挑戦しようと心に決め、滋賀県立大学に入学しました。そして1年生の夏、国際交流の研修プログラムに参加し、アメリカで3週間生活しました。研修中、自分の考えや感謝の気持ちを十分に伝えることができずに、もどかしい思いを何度もしました。一方で、現地で触れるもの全てが新鮮で、異文化を知ることの楽しさを実感し、もっともっと世界中の国々に行ってみたいと思いました。また、語学力の向上には、会話の中で実際に「話す」ことが何より大切であると痛感し、間違いを恥ずかしがらず積極的に会話に参加できるようになりました。現地での経験があったからこそ、こうした変化が生まれたのだと思います。
 在学中は英語だけではなくドイツ語の勉強にも力を注ぎました。2年生と3年生の夏休みには、ドイツ国内の大学で行われている語学研修に参加しました。この研修にはドイツ語を勉強している学生が世界中から集まります。1クラス当たりの学生数は数名で、文法の説明から会話の練習まで全てドイツ語で行われます。平日は午前、午後とも約3時間の授業があり、週末はオプションとして遠方へのツアーが組まれています。ツアーには自由に参加することができ、世界遺産や博物館を訪ねて街の歴史を学びます。同じクラス以外の大勢の学生と一緒に行動しますので、緊張しながらも交流の輪を広げられる貴重なイベントです。また、街中では屋外演奏会や演劇が催されており、こうした日本ではあまり馴染みのない文化に触れた時間も、忘れられない思い出です。  海外での語学研修は決して特別な選択肢ではありません。今の自分に満足せず、一歩でも前に進みたいと願っている人なら誰もが参加できるものです。語学研修を通じて広い世界に触れ、未来への道を切り開いてください。

槙山 恵子 さん
・環境科学部環境生態学科卒 ・レイクスペリオル州立大学短期研修参加 ・ライプツィヒ大学・アーヘン大学夏期語学研修参加 ・気象庁勤務

欧州の魅力を感じながら

山元 周吾 さん

 私は交換留学生として1年間アウクスブルク大学で地理学を学んできました。大学の授業では学生が自分の研究をそれぞれ紹介し、それをみんなで議論することにほとんどの時間が使われていました。プライベートでは、以前からヴァイオリンをやっていましたのでドイツでもオーケストラに参加し、親しくなった友人たちをコンサートに招待しました。留学前には興味のなかった山登りにも夢中になり、山頂から眺めるドイツの風景にいつも感動を覚えました。夏休みには友達とオーストリアのザルツブルクやチェコのプラハに旅行し、その国際都市たる所以がよく理解できました。教室の中だけでは学べないことはたくさんあります。留学中に将棋や日本のアニメに興味をもっているルーマニア出身の友達ができて、親友と呼べるほど仲良くなりました。人付き合いは言葉よりも気持ちの方が重要だとかつては考えていましたが、コミュニケーションをとる際に言葉がどれほど大切なものか改めて思い知らされました。世界中から集まる留学生の優秀さにも衝撃を受けましたが、それと共にこれ以上にない刺激を受けました。
 帰国してからは滋賀県立大学大学院に進学し、「ドイツの森林・林業」というテーマで研究を続けています。これからもドイツとのつながりを大切にしていきたいと考えています。留学する魅力の一つは、新しいことにも挑戦しやすいことです。ぜひ海外にも目を向けて、自分の可能性を拡げてください。

山元 周吾 さん
・環境科学部生物資源学科卒 ・アウクスブルク大学留学 ・環境科学研究科在学中

二つ目があるから立体的に見える

大石 大介 さん

 私は一年間、パリの語学学校に通っていました。そこはとても小さな学校で、数週間から数ヶ月の長期滞在まで、それぞれの都合に合わせてさまざまな人が集まっていました。私のように長期滞在する人は、あらかじめ長期のカリキュラムが組まれた学校やコースを選ぶことが多いようですが、私はその学校ののんびりとした雰囲気が好きでしたので一年間そこに居続けました。
 私にとって語学を学ぶことは単純に言語を学ぶことだけではなく、どちらかと言えば考え方を学ぶことに近いかもしれません。フランス語を習得していくにつれ、いかに自分の思考が日本語というツールに規定されているかに気づかされました。ツールによってアウトプットも影響を受けます。たとえば絵を描く時、対象が同じでも水彩絵の具で描くのと油彩絵の具で描くのでは、まるで異なった仕上がりになります。もちろん言語を学んだからといって、急に考え方が変わったり世界が違って見えたりするなんてことはありません。ひまわりの絵は水彩で描いても油彩で描いてもひまわりだからです。しかし水彩しか知らない人間が油彩を知ることは知的な刺激になりますし、単純に可能性が増えます。言うまでもなく留学の魅力は言語の習得だけではありません。メディアを通さず自分の体で異文化を体験できるのは大変刺激的ですし、それだけのために留学する価値があると思います。

大石 大介 さん
・人間文化学部地域文化学科卒 ・フランス L'ecole PERL 語学留学 ・株式会社 メガネトップ勤務

タフになる、中国留学

大石 大介 さん

 私が留学した中国の長沙市は田舎で、北京や上海のように留学生を誘惑するような娯楽はなく、黙々と勉強しました。留学したての頃はまったく中国語が話せず、先生が何を言っているのかさえも皆目見当がつきませんでしたが、数ヶ月もすればある程度理解できるようになりました。日本人は少なく、中国人学生や他国の留学生と交流する機会には恵まれていました。生粋の中国人パワーには最後まで圧倒され続ける毎日でしたし辛い日も少なくありませんでしたが、テレビや本では決して得ることができない異文化体験を通じて心身共に非常にタフになり視野が大きく広がりました。これに関しては社会人になってからも役立っています。私は現在、東京のテレビ番組制作会社のADとして勤務していますが、何週間も休みがなく、徹夜が続く日々を耐えられるのは、やはり中国の荒波に揉まれたおかげで、常に「なんとかなる」という自信を持っています。また、語学力があれば得られる情報量も増えますし、新しい番組の企画を考える際にもまったく別の視点から物事を考えることができるようになるのも強みです。中国での留学生活が、これほどまでに自分に影響を及ぼすとは留学前にはゆめにも思いませんでした。短期間の旅行も楽しいとは思いますが、留学で学べることは想像以上にたくさんあります。早くから就職活動に打ち込むよりも、辛くとも楽しい留学をするほうが将来の選択肢を増やせると思います。

小林 未緒 さん
・人間文化学部地域文化学科卒 ・湖南師範大学留学 ・株式会社 ドキュメンタリージャパン勤務

心に小さな冒険を

深江 宏美 さん

 何かがあるかも。
 そう考えて動き出す人は多いと思います。私の場合もそんな考えから留学という道を選択しました。
 行き先として選んだのは、研究テーマにしようと思っていた内モンゴル。私はそこで貴重な一年間を過ごしました。内モンゴルでの生活はまさにカオスで、刺激的な毎日でした。
 現地の友人や留学生仲間と食事をしたり、旅行したり、パーティで踊り狂ったりして楽しい時間を過ごす日もあれば、文化とは、言語とは、国家とは、そして民族とは一体何なのか、大真面目に思案を巡らせる日もありました。
 留学では今まで自分が培ってきた概念を揺るがすような、そんな新鮮な異文化に触れられるのです。それは本当に活きが良くて、暖かくて、常にかたちを変えるもの。時にはすんなりと自分の中に納まるかもしれません。時には反発して手に負えず、持て余してしまうかもしれません。けれどもそれで良いのだと思います。全てを受け入れるのでは面白みがない。なぜ自分の中にすっぽりと納まるのか、どうして受け入れがたいのか。それについて考え、理解していくことが留学のテーマの一つであると私は考えます。
 私にとって内モンゴルはとても居心地の良い場所でした。好ましく映るときもあれば時にはイライラの原因にもなるのんびりした気風やハングリー精神。各国の友人たちのたくさんの異なった考え。それらを五感で感じることによって視野が広がり、考え方の選択肢が増えました。
 留学から帰ってちょっとだけ困ることが一つ。それは選択肢が増えることによって、「生粋の日本人」には戻れなくなること。時には逆カルチャーショックを経験することもあります。けれどそれも留学ならではの体験。逆カルチャーショックにフフフと笑えるのも留学経験者の特権です。
 日本という枠の外で生活した時、あなたはどうなるでしょうか。それを考えるだけでわくわくしてきませんか。

深江 宏美 さん
・人間文化学部地域文化学科卒 ・内蒙古大学留学 ・県立高校勤務

韓国で勝ち取ったもの

組田 裕子 さん

 留学して1ヶ月経っても、韓国での生活に馴染めず鬱々としていた時、韓国の大学にも剣道部があると知りました。「これなら思う存分日本語が使える!」と考えた私(剣道2段)は、早速入部してみることにしました。ところが、剣道部には誰ひとり日本語が話せる学生がおらず、その上剣道の技の名称までもが韓国語に直されていたのです。「言葉も分からないし、ここにいても迷惑をかけるだけだ」と最初は思っていましたが、韓国人の剣道部員たちは決して私を厄介者扱いしたりせず、私が分からないことは身振り手振りで教えようとしてくれました。韓国語で、面は「モリ」、籠手は「ソンモッ」、胴は「ホリ」と言うこと、試合終了後に対戦相手と握手をすること、こうした日本の剣道との違いを知っていくのが楽しくて、毎日部室に通っては韓国人と話をするようになっていました。韓国語も次第に上達して、部活の話以外にも、勉強の話、恋愛の話、歴史の話、様々な話題について話せるようになり、メンバーとの仲も深まっていきました。帰国まで2週間と迫った頃、ソウル市の全大学が集まる重要な試合に出場させてもらえることになり、団体戦で銅メダルを獲得しました。その時メンバーから「あなたに会えて楽しかった!」と言われたのは、私の留学生活一番の思い出です。互いに語り合い、違いを受け入れること。これからの人生を楽しく生きていくための秘訣を、韓国留学を通じて学ぶことができました。

組田 裕子 さん
・人間文化学部地域文化学科卒 ・国民大学校文科大学留学 ・人間文化学研究科在学中

モンゴルで女優体験!?

堀田 真由 さん

 モンゴルで迎えた夏休みのある日のこと。大使館の方から電話があり、突然モンゴル国営 テレビのドラマに出演することになりました。初めはエキストラだと聞いていましたので、野次馬気分で参加するつもりだったのですが、台本をもらうと台詞がたくさんありました。物語の舞台は1939年、ノモンハン事件。満州国とモンゴル人民共和国の間の国境線をめぐって日本とソ連の両軍の間で発生した紛争の際に、モンゴル人によって日本兵が命を救われたことから、その孫娘が祖父の恩人を訪ねるという話でした。
 なんと、私はその孫娘の役、つまり主役を務めることになったのです。モンゴル語の台詞にはわからないことがたくさんありましたので、急遽、モンゴル人の友人に助けてもらい、徹夜で台詞を覚えました。撮影期間中、私は軍の基地で軍人さんと一緒にご飯を食べたり、当時、捕虜となった日本兵が強制労働させられていた廃墟(今は刑務所の敷地内)やそのほかの史跡も訪ねたりすることができました。そのときは演技のことに夢中で考える余裕がなかったのですが、後になってから普通に過ごしていたら見られないようなものを目にし、普段では行けないような場所に行けたのだと気付きました。この体験を通して、現代史に関する理解が深まり、モンゴル人と日本人の関係についてもっと知りたいと思いました。このような貴重な経験は、日本では得られませんので、私にとって一生の思い出となりました。

堀田 真由 さん
・人間文化学部地域文化学科在学中 ・モンゴル国立大学留学

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