【県大jiman】特別対談号 研究内容について(金先生)
研究内容
県大jimanスタッフ:金先生が行っている研究は古墳時代の考古学だけでなく、朝鮮半島と日本の国際交流などですよね。あと、世界遺産学概論の先生もされていて、すごく幅広いなぁと思うのですが、自身の研究について語っていただけますか。
金:古墳時代の考古学の中でも、古墳時代の日本と朝鮮半島との間でどのような交流があったのか。これが僕の研究テーマです。人によっては土器からそれを明らかにしたり、集落の研究をしたりすると思うんですが、僕はその古墳時代の古墳から出てきた副葬品から研究テーマを掘り下げています。それも色んな副葬品がある中で、特に鉄などの金属でつくられたものを分析対象にしています。
なぜかというと、鉄って最初は大陸から朝鮮半島を経由して日本にやって来たものなので、日本で見つかる鉄のことを研究しようとすると、おのずと朝鮮半島との関わりを考えざるを得なくなってしまう。だから、古墳から出土する鉄の剣とか、あと金や鉄でつくったアクセサリーとか、細かい技術でつくられた金属製品を研究していますね。
研究のきっかけ
金:最初はエジプトのピラミットとかが好きだったんですよ。僕が高校生くらいまでの頃は
吉村作治先生※4が頻繁にテレビに出演されていて、エジプトのピラミットの謎とかを語っておられたんです。ピラミットすごいなと思って色々自分で調べて、マヤのピラミットのような他の地域のものも含めて、そういう研究がしたいと思うようになりました。でもいざ大学に入って(研究を)やろうとすると、海外の考古学なので当たり前なんですが、色々な言語を勉強しないことが分かったんです。それで、「ダメだこれは」って一回心が折れてしまって...。
大学2年生が終わったときに、自分のルーツである韓国にたまたま韓国語と韓国文化を学びに留学する機会がありました。朝鮮半島の考古学を研究しようと思ったのはそのときからですね。というのも、留学生活を始めて早々の2005年の3月、島根県が竹島の日を制定したんです。いきなり日本と韓国の関係が危うくなって、ソウルで日本語を話したら殴られるかもみたいな雰囲気になってしまいました。
でも、そのようなことがあったことで、「(日韓関係は)昔からこんな感じやったんかな」って気になりました。日本も韓国もなかった時代には、もっと違う関係があったんじゃないかって。ぼんやりではあるものの、自分自身の大きな研究テーマがそれなりに定まってきたのはそのときからですかね。考古学をやめずに済んでよかったなって思います。ピラミットだけを研究していたら、多分考古学はやってないなぁ。
※4 古代エジプト研究の第一人者として知られている考古学者。
印象に残っている発掘調査のエピソード
県大jimanスタッフ:発掘調査をしていた中で、すごく印象に残っているエピソードはありますか。
金:発掘に行って面白かったのは、大学院で2回目の韓国留学をしていた時に参加した発掘調査で、結構すごいものが出てきたときですね。竜を象った、金色のベルトが出てきたんです。どうもそれが、おそらく中国から来たものじゃないかなとなりました。韓国の金海(キメ)っていうところにある大成洞古墳群という遺跡です。そのベルト飾りは、当時日本では見つかっていたけど、まだ韓国で見つかっていなかったものでした。「日本から中国に直接来ていたんじゃないか」って言われてたのが、朝鮮半島を経由して日本へ来ていた可能性が出てきた、と。そのことを示す出土品に、たまたま参加していた発掘で遭遇したんです。それが面白かったですね。
考古学の魅力
県大jimanスタッフ:金先生から見た考古学の魅力はこれっていうのはありますか。
金:考古学の魅力はやっぱり「モノ」が目の前にあることじゃないですかね。もちろん文字で記された古文書も目の前にありますが、考古学って土器や遺跡を手掛かりに当時の人の活動を復元していくじゃないですか。まさに昔の人が直接手に触れたものが目の前にあって、それを今この時間に自分自身が実際に触ったり観察したりして、当時のことを考えるっていう、その存在感ですかね。歴史と距離が近いというか。そこが魅力だと思います。