【県大jiman】特別対談号 高校生・在学生へのメッセージ
高校生・在学生へのメッセージ
県大jimanスタッフ:最後に、県大の受験を考えている高校生と、今いる在学生に向けてのメッセージをそれぞれいただきたいです。
中井:高校生には、本当に考古学を学びたいと思ったら、ぜひ県大を視野に入れてください、と言いたい。僕はいなくなるけれども、今おられる金先生や後任の佐藤亜聖先生、我々の諸先輩の先生たちは立派な人たちです。フィールドワークを重視されているし、学べる場としては充実していると思うんですよ。普通大学にいる考古学の先生って一人ぐらいです。二人の教員がいる大学ってなかなかないですよ。歴史的にも、古いところだけではなくて新しいところも学べるのも、良いところです。
考古学が今の世の中で役に立つかって言われると、正直僕は役に立たないと思っているんです。だけど、役に立たないことをするのが人間なんですよ。人間だからこそ大いに役に立たないことをやってほしいわけです。役に立つことばっかりやったって、それは学問にはならないと僕は思っていますね。
金:「文系は必要なのか」「考古学は社会の役に立つのか」って、やっぱりよく言われるんですよね。実際のところ、僕は大いに役に立っていると思っているんですけど、確かに学問として発達させていくことが人類の進歩に直接つながるのかと言われると、わからないです。でも、考古学を通してその地域の歴史や文化を掘り下げて、そこがかつてどういう場所だったかを追求していくことは、地方創生の重要性が叫ばれている今、重要なんかじゃないかと思います。テクノロジーの発達といったことも間違いなく大切ですが、地域のアイデンティティを確固としたものにしていくことが、そこで生活している人たちにとっての活力につながるんじゃないか、と。だから、「役に立つか立たないか」を問われたら、すぐには役に立たないかもしれないと答えざるを得ないけど、「必要なのか」って聞かれたら「必要でしょ」って僕は答えます。
歴史をつくっているのはやっぱり人間なんだなということを、考古学だとド直球で感じられるじゃないですか。「へったくそな土器やな」みたいな。そこが重要かなって思いますね。
中井:人間の持つ、ある意味本能的な好奇心をくすぐるようなものを、やっぱり歴史は持っているんじゃないかな。そういう意味では、「考古学は役に立ってるねんで」って思う。
金:高校生へのメッセージということでは、繰り返しになるけど、県大に来てもらったら「考古学」というものを確実に学べるよって言いたいです。僕は高校生の時に「考古学をやろう」と思ったんですが「考古学って何だろう」ってよくわからないまま、なんとなくピラミッドの写真を眺めたりしていました。「よくわかんないけど考古学したい」と思っている高校生に来てもらったら、「考古学」とは何なのかがわかるよって言いたい。それで面白かったらぜひ一緒に研究しましょう。在学生の人たちには、「考古学ってどんなんか、わかってるね?」って言いたい(笑)。在学生の人たちにメッセージ、中井先生はどうですか。
中井:考古学に限らず、大学時代にやっぱり何か見つけてほしい。何がやりたいのかって。たまたま僕や金先生は考古学を、僕は特に城っていうものを極めたい思いで大学時代を過ごしていたわけだけど。何がしたいのかは、教員の研究から見つけることもできるだろうし、とにかく4年間で何か見つけてもらえたらいいなぁと思うんですよ。それが仕事につながってもいいし、仕事につながらなくても、趣味だとか生きていく中での方向性みたいなものが得られたら、僕はやっぱり大学に来た意味があると思うんです。
僕が地域文化学科の学科長だったときに言った言葉なんだけれども、「県大に来たくて来た人はもう良しとしましょう。たまたま偏差値でこのくらいかな?って来た人もいるだろう。それから、前期の試験でどこかの大学に落ちちゃって後期で来た人もいて、不本意で来ている人もいるかもしれない。とにかくいろんな思いで来ている人がいるんだけれども、4年後に県大で学んでよかったなぁって、県大にいたことが誇りになってくれたらすごく嬉しい」ってね。「琵琶湖の横っちょの大学に俺は、私は4年間おったんや」というのを誇りにしてもらいたいし、初めはここに来たくなかった人でも「県大に来てよかったな」っていう思いを、とにかく在学生の人には味わってほしいね。
正直言って、僕も不本意で第一志望ではない大学に行ったけど、今はやっぱりその大学で学んだ4年間っていうのはすごく楽しかったし、一番の大学だったと思っているんだよね。だから皆さんにもそう思ってほしい。「県大が一番や」と思ってほしい。
金:在校生の皆さんは、それぞれ色々な事情があってここに来ることになったかもしれないですけど、この県大でも色々なことが学べるし大抵のやりたいことは実現できますよね。だから、一所懸命やってほしい。大学を卒業してから先の人生では、いわゆる「研究」をする時間や自分の調べたいこと・知りたいことを一生懸命掘り下げられる時間はほぼないと思うんです。研究というのは、やってみると何かとうまくいかなくてしんどかったりもするけど、基本的にはどんどん面白くなっていくものです。「へー、こんなことがあるんや」っていう小さな発見の連続があったりします。もちろん、それなりに打ち込まないと味わえない楽しさではあるんですが、大学を卒業した後だと二度と味わうことができない楽しさかもしれません。在学中、ぜひ何かを必死で掘り下げてみる楽しさを味わってほしいなと思います。