環境科学研究科環境動態学専攻の西野大輝さん、環境科学部環境生態学科の吉山浩平准教授らの研究グループが、淡水二枚貝の寄生者であるタナゴ類とカイビルの関係について実験を行い、二枚貝内でカイビルがタナゴ類の卵を摂食することを世界で初めて発見しました
2024年1月10日
環境科学研究科環境動態学専攻の西野大輝さん、環境科学部環境生態学科の吉山浩平准教授らの研究グループが、淡水二枚貝の寄生者であるタナゴ類とカイビルの関係について実験を行い、二枚貝内でカイビルがタナゴ類の卵を摂食することを世界で初めて発見しました。
成果の概要
タナゴ類はコイ科タナゴ亜科に属する純淡水魚で淡水二枚貝の鰓の中に産卵します。一方カイビルは淡水二枚貝内に寄生するヒルで、淡水二枚貝の体液や魚類の血を摂食することが報告されています。これまで、二枚貝内におけるタナゴ類とカイビルの関係は謎のままでした。
研究グループは、まず秋繁殖タナゴ類のカネヒラが生息する滋賀県立大学内の水路に淡水二枚貝を人為的に導入して、カネヒラに自由に産卵させた後、その二枚貝の回収と解剖を行いました。その結果、通常色(茶色)のカイビルと比べ明らかに黄色いカイビルが採取されました(図a)。さらに、実験条件下でタナゴ類の卵をカイビルに与えると、カイビルがその卵を摂食しカイビルの体色が茶色から黄色に変化していきました(図b)。本研究により、世界で初めて淡水二枚貝内でカイビルがタナゴ類の卵を食べることを明らかにしました。
さらにカイビルの存在が、3種のタナゴ類(アブラボテ、ヤリタナゴ、カネヒラ)の二枚貝選好性に与える影響を明らかにするために、カイビルの寄生密度を操作した二枚貝を用意して産卵実験を行いました。その結果、アブラボテはカイビルに寄生された二枚貝を避けて産卵する一方、ヤリタナゴとカネヒラは寄生密度に関わりなく産卵することが明らかになりました。すなわちタナゴ類の中でも、カイビルに寄生された二枚貝を認識できる種とできない種が存在することが分かりました。
日本国内において、タナゴ類に属する多くの種は絶滅の危機に瀕しています。本研究の成果は、タナゴ類の保全においてカイビルの影響を考慮する新たな必要性を示唆しています。
解剖された二枚貝から発見された通常色(茶色)と黄色のカイビル
実験室内でカネヒラの卵を摂食する2匹のカイビル
赤色と黄色の矢印はそれぞれ通常色(茶色)と黄色のカイビルを示す。
論文タイトルと著者
論文タイトル:Feeding of mussel-associated leeches Hemiclepsis kasmiana on bitterling embryos: Novel interaction between parasites in a shared host
著者:Daiki Nishino, Takayoshi Nishida, Kohei Yoshiyama
掲載誌:Journal of Fish Biology. 103(5):1232-1236, 2023年11月