大学院環境動態学専攻の宋培学さんと稗田真也さんが、17th International Symposium on River and Lake Environment and 3rd International Symposium on Aquatic Botanyにおいてstudent poster presentation awardを受賞しました

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 2017326-29日に立命館大学びわこ・くさつキャンパスで開催された17th International Symposium on River and Lake Environment and 3rd International Symposium on Aquatic Botanyにおいて、本学大学院環境科学研究科環境動態学専攻博士後期課程所属の宋培学さんと稗田真也さんがstudent poster presentation awardを受賞しました。本賞は同国際シンポジウムで発表された27題のポスター講演の中から、最優秀の4が選ばれたものです。

 

宋さん受賞ポスター論文の概要

<著 者>

宋培学、田辺祥子、易容、伴修平

<題 目>

Seasonal changes in microbial components including chytrid zoospores in Lake Biwa

「琵琶湖におけるツボカビ遊走子を含む微生物画分の季節変動」

 

<論文の内容> 

湖に生息する真菌類の一種であるツボカビは、植物プランクトンの動態のみならず、食物連鎖を介して湖沼生態系に影響をおよぼしている可能性が指摘されている。しかし、その形態的特徴の貧弱さによって、特に従属栄養鞭毛虫と混同されて今日に至る。本研究では、ツボカビの湖沼生態系における機能を明らかにするため、まず分子生物学的手法を用いて、琵琶湖に出現する真菌類を網羅的に同定することを目的とした。調査は、琵琶湖の沖帯に定点を設け、周年に渡って毎月行った。顕微鏡観察によって、浮遊性の細菌、ナノ鞭毛虫、植物プランクトン、そしてツボカビの胞子嚢の数をそれぞれ計数した。この他に20 µm以下の画分について次世代シーケンス分析を行って、真菌類の網羅的な探査を行った。DNA情報から得られた真菌類の種数は、研究期間内に260種を上回った。月毎にみると25〜55種で、この内ツボカビ類は半数近くを占める月もあった。調査期間中に卓越した緑藻類のStaurastrum dorsidentiferumなど数種の大型植物プランクトンの変動は、ツボカビによる寄生によって制御されているようだった。

■稗田さん受賞ポスター論文の概要

<著 者>

稗田真也、金子有子、野間直彦

<題 目>

Sexual reproduction ability of an invasive aquatic plant, Ludwigia grandiflora subsp. hexapetala in Lake Biwa

「侵略的外来水草ウスゲオオバナミズキンバイの琵琶湖における有性生殖能力」

 

<論文の内容> 

ウスゲオオバナミズキンバイは中南米原産の侵略的外来水草で、ヨーロッパに侵入して深刻な問題を引き起こしており、近年では琵琶湖にも侵入・繁茂して問題になっています。従来の研究では、主に断片化した植物片により無性的に繁殖すると考えられてきましたが、本研究では、種子による有性生殖についても警戒する必要があることを示しました。花に袋かけをしたり、雄しべを除去したりすると全く結実しないことから、送粉生物に依存しない自動自家受粉や、花粉を使わない無性生殖をしないことがわかりました。しかし人工的に自家受粉すると結実することから、花粉を媒介する昆虫がいれば結実することが分かりました。さらに、野外での送粉昆虫の調査から、在来のハナバチ類とともに外来のセイヨウミツバチが結実に大きな役割を果たしていることが分かりました。結実した種子について野外での越冬の条件を想定し、乾燥・湿潤・泥中条件で4℃120日間保存した後に種子発芽実験を行ったところ、とくに泥中保存条件で高い発芽率を示し、野外でも越冬していることが示唆されました。近年では、種子はガン・カモ類に食べられても生きたまま排泄される周食型散布されることが指摘されているため、琵琶湖周辺の水域においてもオオバナミズキンバイの侵入に警戒する必要があると考えられます。

授賞式授賞式
受賞者受賞者(左端:宋培学さん、右端:稗田真也さん)