植物由来で強度・伸びに優れた分解可能なバイオベースポリマーの開発~植物油とアミノ酸より誘導したサステイナブル高機能材料~

2026年7月6日

1.ポイント

  • 資源循環型社会(サーキュラーエコノミー)の実現に向け、石油資源に頼らない、分解・ケミカルリサイクル注1)可能な高機能バイオマスプラスチックの開発が急務である。
  • 非可食の植物油とアミノ酸から、ポリエチレンなどの汎用プラスチックより柔軟で強度に優れたフィルム物性を示す、高機能バイオベースポリ(エステルアミド)注2)を開発した。
  • 独自の高性能触媒による定量的な結合形成-解離反応により、ポリマー(高分子)の合成・分解が可能で、バイオマス資源から優れたサステイナブル材料の研究開発が加速すると期待される。

2.概要

JST戦略的創造研究推進事業CRESTにおいて、工学部材料化学科の竹下宏樹准教授らの研究グループは、東京都立大学大学院理学研究科の野村琴広教授(研究代表者)、大阪産業技術研究所森之宮センター物質・材料研究部の平野寛主管研究員、東青史研究室長らの研究グループと共同で、非可食の植物資源から、分解・リサイクル可能で、汎用プラスチックより柔軟で強度に優れる物性を示すバイオベースポリ(エステルアミド)を開発しました。分解・リサイクル可能な高機能サステイナブル材料の開発は、サーキュラーエコノミーの実現のための重要課題です。植物油注3)から誘導されるバイオマスプラスチックは、ポリエチレンなど石油由来の汎用オレフィン系ポリマーの有望な代替材料と期待されますが、この種の汎用材料よりフィルムの引張強度注4)と破断伸び注4)に優れた材料の開発例は極めて限定されます(関連情報1)。

本研究グループは、非可食の植物油とアミノ酸などから誘導されるバイオベースポリ(エステルアミド)に注目し、重縮合注5)法の中でも特にオレフィンメタセシス重合法注5)とつづくオレフィン水素化により目的の高分子量材料を合成すると、汎用プラスチックより優れた特性(引張強度や破断伸び)を示すことを明らかにしました。また、繰り返し使用が可能で、使用による延伸・破断・損傷後も自然に使用前の状態に修復(自己修復)する機能材料の開発にも成功しました。

本成果は、分解・リサイクル可能で、汎用プラスチックより優れた物性を示すバイオベースポリマーの材料開発にはじめて成功したものです。なお、独自触媒を用いる定量的な結合形成-分解反応(関連情報2および3、エステル交換反応)により、ポリマーの分解とポリマー原料(モノマー)の合成が可能で、資源循環型の有望なサステイナブル材料となることを示唆しました。

本研究成果は、2026年7月6日(現地時間)に米国化学会の学術誌「JACS Au」のオンライン版で公開されます。

本成果は、以下の支援によって得られました。
JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)

  • 研究領域:「分解・劣化・安定化の精密材料科学」
  • 研究総括:高原淳(九州大学ネガティブエミッションテクノロジー研究センター特任教授)
  • 研究課題:「機能集積型バイオベースポリマーの創製・分解・ケミカルリサイクル(課題番号:JPMJCR21L5)
  • 研究代表者:野村琴広(東京都立大学大学院理学研究科教授)
  • 研究期間:2021年10月~2027年3月

上記研究課題では、豊富な非可食植物資源からのバイオベースポリエステル・アミドの精密合成と高機能材料の開発、ポリマー分解によるモノマーや機能化学品の合成を可能とする高性能触媒の開発を目的としています。

3.研究の背景

近年サーキュラーエコノミー・資源循環型社会の実現に向け、分解・リサイクル可能な材料開発が注目を集めています。中でも石油資源に頼らないサステイナブル材料として、非可食の植物油(長鎖脂肪酸エステル)と植物資源から誘導される通称・バイオベースポリマーが注目されています。しかし、ポリエチレンやポリプロピレンに代表される汎用プラスチックと同程度の引張強度と破断時伸びといった機械特性を示す材料の報告例はあるものの、この材料の特徴を活かした高機能材料の開発事例は限られていました(関連情報1)。

今回、非可食の植物油とアミノ酸から誘導される対称型の繰り返し単位からなる新規バイオマスプラスチック、ポリ(エステルアミド)、の設計・合成・構造解析・物性解析を検討し、この材料が分解・リサイクル可能で汎用材料より柔軟で強度に優れる高機能材料となることを明らかにしました(図1)。また、繰り返し使用が可能で、使用による延伸・破断・損傷後も自然に使用前の状態に修復(自己修復)する機能を示す材料開発にも成功しました。この種の材料は、独自の触媒技術により、原料(モノマー)の合成とポリマーの分解・再合成が可能で、資源循環型の有望なサステイナブル材料となることを提案しました。

4.研究の詳細

本研究グループでは、非可食の植物油とアミノ酸から誘導される対称型の繰り返し単位からなる新規バイオマスプラスチック、ポリ(エステルアミド)を設計・合成しました(図2)。このポリマーフィルムが汎用プラスチックより破断するまでの伸びと強度に優れた物性を示すことを明らかにしました(図1)。物性には使用するアミノ酸部位の効果が大きく、使用や破断後でも速やかに使用前と同様のフィルム形成・物性を示す自己修復機能を示す材料も見出しました。また、放射光施設でのX線構造解析(WAXDやSAXS測定)等を通じて、材料中に微量に存在する結晶成分が物性の発現に寄与することを解明しました。

今回開発した材料は、独自の触媒技術(定量的なエステル交換反応)を利用することで、ポリマー原料(モノマー)の合成とポリマーの分解・再利用が可能です(図3)。物性はアミノ酸や架橋部位(コハク酸、糖から誘導)で調節可能で、サーキュラーエコノミー・資源循環型社会を指向した先端材料として、今後の広範な展開が大いに期待できます。

図1
図1今回開発したバイオベースポリ(エステルアミド)と汎用プラスチック(ポリエチレンやポリプロピレンなど)との機械特性(引張強度と破断時伸び)の比較。一般的に破断するまでの強度と伸びは二律背反関係にある。

図2
図2今回開発したバイオベースポリ(エステルアミド)の基本構造。コハク酸(紫色、糖から誘導)、長鎖脂肪酸(植物油より誘導)、アミノ酸を構成単位とし、定量的なケミカルリサイクルが可能(アルコールとのトランスエステル化、青色矢印部位が解離)。下図は調製したバイオベースポリ(エステルアミド)フィルム(溶媒キャスト法)。

図3
図3今回開発したバイオベースポリ(エステルアミド)の定量的なケミカルリサイクル(アルコールとのトランスエステル化)とポリマーの再合成サイクル(資源循環サイクル)。ポリマーの分解・再重合、モノマー合成に独自の高性能エステル交換触媒を利用。

5.研究の意義と波及効果

今回開発したバイオマスプラスチック(図2)は、植物油とアミノ酸を繰り返し単位とするので、使用できる原料の適用範囲が広く、広範な応用展開が可能です。特に物性(フィルムの引張特性や自己修復機能)は、強いポリマー鎖間の相互作用に起因し、アミノ酸部位やコハク酸(糖から誘導)などの架橋部位で調節可能です。また、ポリマーは、既に開発した独自の触媒技術(関連情報2および3)により、定量的な結合形成-分解(エステル交換)が可能で、ポリマー原料(モノマー)の合成、ポリマーの分解・リサイクルが実現可能です(図3)。さらに、セルロースナノファイバーをはじめとする天然由来の繊維との複合化による高強度化なども可能になります。

本成果は、バイオ由来の原料からなる繰り返し単位の中で、特に図2の中間部位の効果に注目したもので、汎用材料より秀でた物性・機能を示すことから、今後はサーキュラーエコノミー・資源循環型社会の実現に向けた材料開発が大きく進展することが期待されます。

プレスリリース

植物由来で強度・伸びに優れた分解可能なバイオベースポリマーの開発~植物油とアミノ酸より誘導したサステイナブル高機能材料~

本学研究者情報

工学部材料化学科准教授竹下宏樹
研究者情報

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