2017/09/14
9月3日~5日に滋賀県立大学で開催された日本ベントス学会大会において、本学大学院環境科学研究科環境動態学専攻の高柳春希さんが、学生優秀発表賞を受賞しました。
■受賞発表の概要
<著 者>
高柳春希
<題 目>
水田の死貝 (Bellamya quadrata histrica ) が水中微生物群集に及ぼす影響
<発表の内容>
水田には多数のタニシが生息し、微小な藻類を摂食して数を減らすことと、排出した糞が栄養源となりイネの生育を促進することが知られています。これらの効果は生きているタニシがもたらす効果ですが、中干しや耕耘等で死んだタニシはどのような効果をもたらすでしょうか。この発表では、死んだタニシが水田中の微生物群集(緑藻、ミジンコ、ワムシ)に与える影響について報告しました。タニシは緑藻を食べますがミジンコとワムシは食べず、ミジンコとワムシは緑藻を餌としています。研究の結果、生きているタニシは緑藻の密度を約10分の1に低下させるが、死んだタニシにはそうした効果がないこと、これに対して生きているタニシはミジンコやワムシの密度に影響しないが、死んだタニシはミジンコを3.7倍、ワムシを3.4倍に増加させることが分かりました。これらの結果は、生きているタニシは緑藻を食べて減らすので、緑藻を餌とするミジンコやワムシも少ないままであること、これに対して、死んだタニシは栄養源となることで緑藻を増加させるものの、ミジンコとワムシが旺盛に緑藻を食べることで緑藻はみかけ上増えず、ミジンコとワムシの数だけが大きく増えると解釈できます。つまり、死んだタニシは水田の微生物、特に直接関係のないミジンコやワムシに間接的に強い正の効果をもたらしていることが分かったわけです。この成果は、水田生態系において死貝の効果がかなり大きなことを示唆しており、今後の新たな研究の起爆剤となる可能性があります。