12月2日~4日に札幌市において開催された第48回種生物シンポジウム(種生物学会主催)において、本学大学院環境科学研究科環境動態学専攻を修了し、2016年4月まで本学で博士研究員をされていた渡部俊太郎さんが、最優秀論文賞を受賞しました。
本賞は2016年にPlant Species Biology誌に掲載された38編の論文の中から、最優秀の2編が選ばれたものです。
■受賞論文の概要
<著 者>
渡部俊太郎、野間直彦、西田隆義
<題 目>
「異形異熟性のタブノキにおける開花フェノロジーと配偶成功: Flowering phenology and mating success of the heterodichogamous tree Machilus thunbergii Sieb. et Zucc (Lauraceae) Plant Species Biology 31(1):29–37)」
<論文の内容>
タブノキは西日本の海岸帯を代表する照葉樹ですが、琵琶湖周辺には断片化された集団が残され、その保全が社会的な関心をよんでいます。この論文では、タブノキの持つ特異な開花パタンと結実の成功との関係を明らかにし、有効な保全策を提言しました。タブノキには株により2つの開花パタンがあります。いずれも雌花から雄花に変化しますが、変化の途中で花が閉じる期間に12時間と24時間の2型があります。そのため、動物の性と同じように、異なる開花型の間で花粉のやりとりが生じやすくなり、他家受粉が促進されます。しかし、タブノキの株数が少なくなると、いずれかの開花型に偏り、多数派の開花型は花粉に恵まれずに結実率が低くなると予測されます。この予測について野外で調べたところ、予測通りであることが実証されました。すなわち、個体数が多いときには他家受粉を促進する適応的な開花パタンが、個体数が少ないときには逆に結実を阻害することが明らかになったわけです。この結果を逆手にとって、異なる開花型の株が互いに隣接するように配置することで、タブノキの種子を効率的に実らせることができるでしょう。この方法はタブノキの保全にとって、シンプルで有効な方法になるものと期待されます。