このたび、環境科学部環境政策・計画学科の村上一真准教授が、「2016年度環境経営学会学会賞(学術貢献賞)」、および「2016年度環境科学会論文賞」を受賞しました。
(1)2016年環境経営学会学会賞(学術貢献賞)
受賞対象著作:金原達夫・村上一真(2015)『環境経営のグローバル展開:海外事業およびサプライチェーンへの移転・普及のメカニズム』白桃書房、pp.256.
選評:
日本企業がその社会的責任として海外を含めたサプライチェーンにおいて環境に配慮することが求められているなかで、本書は日本企業がその海外子会社の環境経営に対しどのような影響を与えているかという先進的なテーマに包括的にアプローチし、その要因を実証的に明らかにした点で学術的な意義がある。
(2)2016年度環境科学会 論文賞
受賞対象著作:村上一真(2013)住民の森林環境税制度受容に係る意思決定プロセスの分析-手続き的公正の機能について-,環境科学会誌,26(2),118-127.
選評:
本論文は社会調査で得られたデータに基づき,住民が森林環境税の必要性を判断する際の意思決定プロセスを分析している。その際,政策効果から必要性を判断するシステマティック処理と,森林行政への信頼から必要性を判断するヒューリスティック処理の両方の存在を仮定したモデルで共分散構造分析を行っている。その結果,森林環境税の政策効果と森林行政への信頼は,ともに必要性に関する判断要因となるが,政策効果の方が必要性判断への影響力が大きいことが示されている。さらに,手続きの公正さは,政策効果及び森林行政への信頼に影響を与えることで間接的に必要性判断に影響することが示されている。また,森林環境税への認知が低いグループ及び森林への関心が低いグループは,これらが高いグループと比較すると,相対的に森林行政への信頼というヒューリスティック処理に重きが置かれていることが示されている。一方,森林環境税への認知が高いグループ及び森林への関心が高いグループは,政策効果のみを判断要因とし,システマティック処理に基づいて意思決定を行っていることが示されている。
政策の必要性について市民が完全な情報に基づき合理的に意思決定を行うことをあらゆる政策の必要性判断について仮定するのは非現実的であるため,システマティック処理とともにヒューリスティック処理が行なわれる場面が多いと考えられる。本研究ではどのような場合にどちらの処理が行われる傾向があるかを,森林環境税という現実の政策のもとで明らかにしており,今後の行政の市民に対する情報提供のあり方や政策導入の手続きのあり方についてのインプリケーションが大きく,今後の研究の発展が期待できる。以上より,本論文は,本会の論文賞に値すると考えられる。